バセドウ病治療最新news

バセドウ病治療最新news おすすめ

順天堂大学によるバセドウ病治療に関する論文発表

先月、順天堂大学大学院医学研究科内分泌内科学の研究グループメンバーによりバセドウ病治療に関する、論文が発表されました。

 

以下、順天堂NEWSより引用

■本研究成果のポイント

  • 放射性ヨウ素内用療法の治療効果と、治療前の推定ヨウ素摂取量 (注4)との間には関連性を認めなかった。
  • 本結果は放射性ヨウ素内用治療前、慣例で行われていた1週間以上にわたる厳格なヨウ素制限が不要である可能性を示唆した。
  • 本研究結果によりバセドウ病に対する放射性ヨウ素内用治療の簡便化が可能となり患者負担の 軽減が期待できる。

背景

バセドウ病は、代謝をつかさどる甲状腺ホルモンが過剰分泌され、動悸、体重減少、指の震え、暑がり、汗かきなどの症状が出現する病気であり、日本人において甲状腺ホルモンの過剰分泌が原因でかかる病気の中で最も患者数が多い病気です。RAITは、薬物療法、手術と並ぶバセドウ病の治療法の1つで、薬物療法や手術が困難な場合に行われます。この治療は、甲状腺ホルモンの原材料であるヨウ素が甲状腺組織に特異的に取り込まれる仕組みを利用した治療法であり、放射性ヨウ素をバセドウ病患者に投与して甲状腺組織を破壊することで、甲状腺ホルモンの分泌を抑えます。放射性ヨウ素をより効率的に吸収するためには体内のヨウ素は欠乏状態にあることが望ましいとされていることから、治療前には、食事由来のヨウ素制限やバセドウ病治療薬として用いるヨウ素(無機ヨウ素)を10~14日間にわたり制限します。しかし、元来日本人はヨウ素を豊富に摂取する食習慣があるため治療前の摂取制限の有効性は不明であり、また、バセドウ病治療薬の中止は、病状悪化を招くリスクがありました。このようにRAIT前のヨウ素の制限が必要か否かは臨床現場において重要な問題ですが、これに関して詳細に検討している研究はありませんでした。そこで本研究は、ヨウ素制限がRAITの治療効果にどの程度影響を与えるかを明らかにすることを目的に行いました。

内容

研究グループは、順天堂医院および甲状腺専門病院である金地病院にて放射性ヨウ素(131I 480MBq[13.0mCi])のRAITを行ったバセドウ病患者 81例を対象として1年後の治療効果を判定し、ヨウ素摂取量を含む治療前の患者背景因子と治療効果との関連を分析しました。本研究のRAITでは、治療7日前から食事由来のヨウ素制限、5日前からバセドウ病の治療薬をすべて中止し、治療当日の甲状腺機能および尿から推定ヨウ素摂取量を算出し、治療1年後の効果を判定しました。RAITの治療効果は1年後も抗甲状腺薬やヨウ素の使用を中止できない群を非寛解群、それ以外を寛解群と定義しました。本判定基準による治療1年後の寛解率は56.8%であり、日本における平均的な寛解率と同等でした。非寛解群では寛解群と比較して有意に甲状腺が大きいものの、非寛解群と寛解群との間に推定ヨウ素摂取量の差異は認めませんでした(図)。しかし、推定ヨウ素摂取量が日本人の平均的な摂取量の倍以上(約600µg/日以上)である症例はすべて非寛解群に分類されました。

図

また、ヨウ素を含む治療薬の服用を5日間中止することによる患者への有害事象は認められず、治療薬の投与量とRAITの治療効果との間に関連性は認められませんでした。このことからヨウ素治療は5日間の休薬で十分であると考えられました。さらに、どのような因子が治療効果に影響を及ぼしているかを統計学的に検討した結果、治療効果へ影響を与える因子は甲状腺の大きさであり、推定ヨウ素摂取量や治療前ヨウ素治療は影響が少ないと考えられました。
以上の結果から、バセドウ病治療におけるRAIT前のヨウ素制限は、短期間かつヨウ素摂取量が過剰にならない程度のヨウ素制限で十分であることが明らかになりました。本研究成果は、放射性ヨウ素治療前に慣例で行われてきた1週間以上にわたる厳格な治療前ヨウ素制限が不要であることを明らかにし、バセドウ病に対する治療の簡便化による患者の負担軽減が期待できます。

今後の展開

本研究では、7日間にわたる厳格な食事由来のヨウ素制限をしたにもかかわらず、その治療効果の平均値は日本人の平均ヨウ素摂取量とほぼ同等であることを明らかにしました。このことから、今後、バセドウ病に対するRAIT前のヨウ素制限の必要性そのものに関する検証が必要だと言えます。また、本研究で明らかとなった治療効果を決定する因子は甲状腺の大きさであり、約4割強の患者さんは1年間で改善に導くことができていないことから、今後、甲状腺の大きい患者さんに対応する方策を模索し、検証することで、より確実な治療効果を得られる治療方法へと高めていきたいと考えています。なお、本研究結果は、元来ヨウ素充足国である日本にのみ適応した方法ではなく、ヨウ素摂取量が適正化された諸外国においても適応できる治療方法であり、汎用化されることを期待しています。

用語解説

(注1) ヨウ素
ヨードと表記されることもある。ヨウ素は原子番号53、第17族ハロゲン元素に属する非鉄金属元素。古くからヨードチンキに代表される殺菌剤やレントゲン造影剤などに用いられ、バセドウ病では甲状腺ホルモン分泌抑制の役割がある。
(注2) 放射性ヨウ素内用療法
甲状腺組織の主たる構成細胞で、甲状腺ホルモン合成・分泌の中心的役割を果たす甲状腺濾胞上皮細胞がナトリウム/ヨウ素(Na/I)共輸送体を介して、細胞外のヨウ素を特異的に取り込む機構を利用して、バセドウ病や甲状腺がんの治療に用いられる。
(注3) ヨウ素制限
甲状腺機能検査や治療で用いられる放射性ヨウ素(131I)を効率的に甲状腺濾胞上皮細胞に取り込ませるため、Na/I共輸送体で競合する細胞外ヨウ素を可能な限り減少させておく必要がある。そのため、日本をはじめ、諸外国では1日あたりのヨウ素摂取量50μg未満を目的に昆布を中心とした海藻類や出汁などを制限する。日本はヨウ素充足国であるが、内陸の諸外国のほとんどがヨウ素欠乏地域であり、食塩やパンにヨウ素を添加しているため、ヨウ素制限食を用いることが多い。
(注4) 推定ヨウ素摂取量
個人が1日に摂取しているヨウ素量は、体重と尿中ヨウ素濃度、尿中クレアチニン濃度から以下の式を用いて推定することが可能である。
推定ヨウ素摂取量(μg/日)=尿中ヨウ素(μg/L)÷0.92×(0.0009L/h/kg×24h/日)×体重(kg)
(Food and Nutrition Board. Institute of Medicine of the National Academies: Urinary iodine.2001より)

原著論文

本研究は米国甲状腺学会の公式機関誌であるThyroid に公開(2020年7月30日付)されました。
論文タイトル:“ Influence of Short-term Dietary and Therapeutic Iodine Restriction on the Therapeutic Effects of Radioactive Iodine Therapy in Patients with Graves’ Disease ”
論文タイトル(日本語訳):「バセドウ病に対する放射性ヨウ素内用療法において短期間の食事および治療で用いるヨウ素の制限が治療効果に与える影響」
著者:Rie Nishio1, Toyoyoshi Uchida1, Luka Suzuki1, Hiroyuki Onose2, Hiromasa Goto1, Emiko Yamada2, Hiroaki Satoh1, and Hirotaka Watada1
著者(日本語表記):西尾理恵1、内田豊義1、鈴木路可1、小野瀬裕之2、後藤広昌1、山田恵美子2、佐藤博亮1、綿田裕孝1
所属:1 順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学、2 金地病院
DOI:https://doi.org/10.1089/thy.2020.0126
本研究に関するCOIはありません。本研究は、順天堂大学 病院倫理審査委員会により承認され、保険診療内で行われており、研究助成やグラントに基づくものではありません。
本研究にご協力いただいた皆様には深謝いたします。

 

まとめ

要約すると、今まではアイソトープ療法を行うにあたり、ヨウ素が集まりやすい甲状腺の特徴をより活かす為に、アイソトープ療法前の一定期間は極力、自然由来のヨウ素を体に取り込まないよう注意していた。
より、放射性ヨウ素による効果を高める為、自然由来のヨウ素による阻害を防ぐ狙いがあった。しかし、実はこの事前準備(自然由来ヨウ素の取り込み防止)による効果は認められない。という研究結果です。
個人的にはこの研究結果により、バセドウ病治療における劇的な改革にはならないと思いましたが、当療法の考え方として治療薬の中止によるリスクを軽減出来る見込みがある事、患者や患者の家族の負担を軽減したのは大きいと思う。また、今回の研究結果が示した重大な事実の一つとして、今まで慣例的に良いとされてきた事、当然という考えで行っていた事には実は十分な検証データに基づいたものではないケースが潜んでいる可能性があるという事だと思いました。
以上、バセドウ病治療最前線でした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました